海外進出の失敗が怖い。その心理を乗り越える方法

こんにちは。ベトナムで食品企業を11年間運営している荒島が、統計などのデータ上では分からない、現地の生の情報をお伝えするコラムです。

これまでのコラムでは、実際に海外進出する際の計画の立て方、進め方のコツ、各国の市場状況など、具体的なポイントについて紹介してきました。

今回は、海外進出を検討する際の、心理的ハードルを乗り越える方法をご紹介します。

初めて海外進出を検討する場合は、あまりに漠然としていて、どこをどうしたらよいかわからないことも多いです。読者の皆様は、次のようなことを思ったことはないでしょうか?

「全く知らない国に進出するって、うまくいく想像ができない」

「なにをどうやっていいか、足掛かりも分からない。お金も人もかけても無駄になりそうだ」

そもそも現地のイメージがつかず、不確実性が大きいために、うまくいくことが想像できないのではないでしょうか。実際に計画して行動に移してみても、計画通りにいかないときは失敗だととらえてしまうこともあります。

今回のコラムでは、漠然とした心理的ハードルを言語化し、それに対しての対策も合わせてご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

筆者プロフィール

荒島由也・スター・コンサルティング・ジャパン 代表 https://www.star-consulting-japan.com・STAR KITCHEN 代表  https://www.starkitchen-vietnam-gift.com/・独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業アドバイザー(新事業開拓)」神戸市海外ビジネスセンターアドバイザー、岩手県産業創造アドバイザー・日越外交樹立50周年”両国の未来を牽引する若者(U40) (2023)

1.海外進出における3つの心理的ハードル

1-1. 予測可能性が低い

見たことがない国、会ったことがない人々がいる場所は、想像することがなかなかできません。情報を集めに、話を聞いたり本を読んだりしても、実際に見てみると違うということが起こりえます。もちろん国内事業であっても、新しいことをするときは、予測がしにくいものです。海外では、知らないことが多い分、その幅が大きくなるといえるでしょう。

1-2. 周囲の期待への説明がしにくい

海外では、日本とは文化も人の性質も時間の流れも異なります。そのため、実際に海外で事業を進めはじめると、日本で事業をしていた時とは全く違うことが起きえます。事業担当者は現地の性質に合わせて事業を進める必要がありますが、その差異を国内の人に伝えるのが難しいことがあります。

1-3. 何のためにやっているか分からなくなりやすい

知らない土地で何かを始めることは、どうしても試行錯誤が必要になってきます。ですが、1-1のように当初の計画の通りに行かなかったり、1-2のように周りの理解を得られなかったりすると、だんだんと試行錯誤をするのが苦しくなってきます。「もういっそ、慣れ親しんだ国内でやればいいのでは。」何のためにしているかが分からなくなってしまうのです。

2.海外進出の心理的ハードルを乗り越える考え方5選

読者の皆様は、ここまでを読んで、心が沈んでしまったかもしれません。でも、大丈夫です。心理的なハードルも、物理的なハードルと同じように、原因を探せば対策できます。

海外進出に踏み出しづらい気持ちは、おかしなことではありません。心理的なハードルをまずは直視し、それに対してできるだけのことをして、一つ一つ前に進んでいきましょう。

2-1. 予測可能性の低さを受け入れ、計画をブラッシュアップしながら進める

海外進出する際は、初めに計画を立てます。ですが、計画を立てても予測できない部分は必ずあります。1-1でお伝えした通り、海外ではその土地を知らない分だけ、予想外のことが起きやすくなるのです。

計画を変更するのは、決してダメなことではありません。実際に行動すると、起きる事柄も目に入る情報も変わります。計画はブラッシュアップされていくものなのです。最初の計画をおろそかにしていいわけではありませんが、硬直的なものだと考える必要もありません。試行錯誤を続けることこそが大切なのです。

2-2. 周囲も、予測可能性の低さや、現地と差異があることを受け入れる

事業担当者だけでなく周囲も、上記を理解することが大切です。周囲の期待コントロールや説明責任のために失敗しない計画を、と考えると、途端に試行錯誤は難しくなります。データを分析し提示して説明することも大事ですが、それによって確実に分かるのは過去であり、未来の完全な予測はできません。

2-3. ビジョンを明確にする

目標や進め方を共有することは、組織の意思疎通上大事なことです。それなのに、計画は変わりうるし、データに基づく予測も外れうる。では、一体どうしたらいいのでしょうか。

それは、ビジョンをつくることです。もっと大きな構想、揺らがない目標を定めるのです。ビジョンとは、その事業、会社全体がどうなっていきたいかという未来の理想像です。なるべく鮮明にビジョンを描くことで、行動しやすくなります。

海外事業を進める際には、ビジョンと目の前の行動を行き来してズレを埋め、計画をその都度微修正しながら進めていくことが大切です。たとえ途中でうまくいかないことがあっても、「なんのためにやっているか」が自ら説明できれば、立ち直ってまた試行錯誤を続けることができます。

2-4. 最初はコストをかけず小さく始め、まずはやってみる

2-1で計画は変わるものだとお伝えしましたが、もちろんその予測不可能さはリスクでもあります。そのため、いきなり大々的に始めるのはやめましょう。試行錯誤を続けていくことを前提として、それが続けられるようなコスト感で始めることを意識しましょう。

実際に計画を実行に移し始めると、新しい情報が飛び込んできたり、それが刺激になって思いつかなかったアイデアが浮かんだりします。まずは小さなことでも実際に行動してみることが重要です。例えば実際にその国に行ってみるだけでも、大きな変化が起きるかもしれません。

2-5. すでに海外進出をした人に話を聞く

2-2で、未来は完全には予測できないとお伝えしました。ですが、例外があります。「これをやれば成功する」は予測が難しくても、「これをやれば失敗する」は予測がつきやすいのです。

状況が違うとやるべきことも違うため、将来予測はどんな人でも難しいでしょう。ですが、やってはいけないことの予測は、経験を積むとある程度できるようになります。実際に海外進出をした人に話を聞くことは、その点で大きな助けになるでしょう。

3.今回のまとめ

今回は、海外進出に伴う心理的ハードルについて、その例と乗り越え方をお伝えしました。

これらは海外進出だけに特有のハードルではなく、新しいことに踏み出す際はよく生じるものです。ただ海外の場合は、知らない範囲が広いぶんだけ、予測の振れ幅が少しだけ大きくなりやすいだけなのです。そう考えると、海外進出のハードルも少し下がって見えるかもしれません。

海外には、まだ開拓されていない市場がたくさんあります。日本国内で十分市場を広げた商品も、海外進出で、より多くの方に届けることができます。

今回のコラムが、踏み出す際の力に少しでもなれば幸いです。

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この記事を書いた人

スター・コンサルティング・ジャパン・STAR KITCHEN
代表

海外展開、洋菓子製造・販売専門家

プロフィール
スター・コンサルティング・ジャパン代表、STAR KITCHEN創業者。ベトナムで料理教室、洋菓子製造・販売事業も展開。ホーチミン高島屋に店舗を持つ他、 スターバックス、セブンイレブンなどを取引先に持つ。

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