ベトナムで気を付けるべき人材管理のポイント3選

こんにちは。ベトナムで食品企業を11年間運営している荒島が、統計などのデータ上では分からない、現地の生の情報をお伝えするコラムです。
今回は、ベトナムでビジネスをするときの人材管理のポイントについてお伝えします。
同じアジアでも、国ごとに人々の性質や働き方の傾向は異なります。そのため、日本の人材管理方法をそのまま使うのではなく、現地に合わせた方法を探る必要があるのです。
イメージしやすいよう、ここで一つ事例をご紹介します。筆者がベトナムでスイーツ店を起業した頃、現地のビジネス上の価値観を十分知らなかったため、驚くようなことが起きました。ある日、自店のスタッフが、近くの競合の店で働いているのを発見したのです。日本では信義則違反ではと思われるようなことですが、副業が普通のベトナムにはその概念はないのです。次の日何気なく出勤してきたスタッフに、筆者は慌てて、サービスやスイーツ作りの技術流出の話をしましたが、スタッフは首をかしげるばかりでした。
現地の人々が重視する価値観や、望ましいとされるコミュニケーションの仕方をあらかじめ学んでおくことで、こういった事態を乗り越えやすくなります。筆者自身の経験を交えながらお伝えしていきますので、ぜひ最後までご覧ください。

筆者プロフィール
荒島由也・スター・コンサルティング・ジャパン 代表 https://www.star-consulting-japan.com・STAR KITCHEN 代表 https://www.starkitchen-vietnam-gift.com/・独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業アドバイザー(新事業開拓)」神戸市海外ビジネスセンターアドバイザー、岩手県産業創造アドバイザー・日越外交樹立50周年”両国の未来を牽引する若者(U40) (2023)
1. ベトナム人の国民性
1-1. 勤勉で、向上心がある
ベトナムでは、自分の知識やスキルが伸びることに喜びを感じる人が多いです。自主性を持って動こうとする人が多く、マイクロマネジメントされるより、ある程度の裁量を与えられた方がやる気が出るようです。本業以外に副業をやっている人も多くいます。
1-2. 行動力があり、今の喜びを重視する
戦争経験も影響してか、長期的な計画を立てるよりは、今の喜びを重視する人が多いです。柔軟に素早く対応する行動力があるともいえるでしょう。
1-3. 繋がりや人情を重視する
家族や人とのつながりを大事にする人が多いです。信頼できる人だと感じれば、家族ぐるみの付き合いになることもあります。仕事においても、コミュニケーションをよくとって信頼関係を作ることが重要です。
1-4. 感情が態度に出やすい
感情が態度に出やすく、素直ともいえます。怒りなどもはっきり表す傾向にあるため、日本人特有の控えめな表現方法では伝わりにくいです。
2. 人材管理上の3つのポイント
2-1. マイクロマネジメントよりも、目指す方向を提示して任せる方が好まれる
先述したような国民性により、マイクロマネジメントは嫌がられることが多いです。個々の自主性に任せるためにも、会社の方針を浸透させ、目指す方向性を示していくことが重要です。どうしてその仕事をするべきなのか、原点の理念を説明することでも熱意が伝わりやすいでしょう。
また、ベトナム人は向上心が強く、自分の成長を重視しているため、その部分を示すことも重要です。例えば今後のキャリアパスを示したり、適切に評価とフィードバックをする機会を設けたりするとよいでしょう。
2-2. 基本の社員教育はしっかり、ルールは繰り返し伝える
任せることは大事ですが、基礎となるルールは明示しておきましょう。日本流の常識は、現地では常識でないこともあります。冒頭で述べた通り、筆者の経験では、自店のスタッフが近くの競合の店で働いていて、説明しても分かってもらえないこともありました。現地流の比喩を使ったり、それによって具体的に何が起きるかを説明したり、浸透するまで何度も繰り返し伝えていく必要があります。
また、他にも日本では起こりにくい事態が起きることもあります。ここでも筆者の事例を挙げます。ある日カフェの店長が売り上げを持って逃亡し、家を訪れると、履歴書の住所が嘘だったと分かったのです。採用の際は本人確認のために住所の裏どりをするなど、日本よりもさらに細やかな確認をした方がよいでしょう。
2-3. 繋がり・人情を大事にする
全般に人間関係の密度が高いため、人情が大事です。社員とよく話すことで信頼されやすくなりますし、外部との関係においても、人情が大事になります。例えば、規則が担当者の解釈に依存することもあるなど、地元の親しい味方の有無が物事を左右することもあります。
人情がものをいうことが多いため、現地で展示会等に参加する際には、日本の担当者も現地に行くことが望ましいでしょう。原始的ですが、取引先に熱意が伝わる方法と言えます。
3. 今回のまとめ
今回は、ベトナムでの人材管理のポイントについてお伝えしました。
もちろん人材管理は個人個人とのかかわりである以上、実際には、現地の人と関わる中で個別に調整していくことが不可欠です。それでも、国民性について事前に知っておくことは、その際の助けになってくれるでしょう。
今回挙げたポイントは、ベトナムで事業をするときはもちろん、現地の取引先とやり取りをする際にも役に立つはずです。皆様が海外事業を進めるうえで、本コラムが少しでも参考になれば幸いです。
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